高齢者などの終末期医療に関して、1月21日麻生副総理が「さっさと・・・・・・」と発言されたことが報道されました。もう30年ぐらい前、神戸大学附属病院(歯科口腔外科)で、主治医をしていた頃の話になりますが、舌癌などの患者さんの終末期医療をどうするか本人や家族の方と話しあったことがあります。
とにかく生きようと頑張って、気管切開、人工呼吸器挿入、中心静脈栄養などをほどこした患者さんもおられたし、逆にそんなに生きられないのなら、何もしないでいいといわれた患者さんもおられました。本人や家族の意思を尊重しての治療になりますが、私個人としましては少しの延命のために医療費(財政負担)をかけたくないと考えております。
H12年からH22年までの診療医療費推移では医科は上昇、歯科は横ばいの傾向です。
医療費増大をもたらす背景としては、医療提供体制の整備充実や高額療養費制度などの保険給付の整備に加え、近年においては、高齢化と医療技術の高度化の影響が大きい。
高齢者は受診率が高く、いったん羅患するとその傷病期間も長期となり、医療費も高額となりやすい。
平成22年度の1人当たり国民医療費は292,200円です。これを年齢別にみますと75歳以上では878,500円であるのに対して65歳未満では169,400円となっており、前者は後者の約5倍となっています。
2010年の平均寿命は男性で79.55歳、女性で86.30歳です。平均寿命は医学の進歩などにより延び続け、日本は世界トップレベルの長寿大国であり大変喜ばしいことです。
しかしながら皆が突然死するわけではありません。
介護などを必要とする期間(男性9.13年 女性12.68年)も含まれています。
健康な期間が長くなれば本人にとって幸福ですし、負担となる介護や医療費も抑えることができます。
健康寿命を延ばすには、バランスのよい食生活や適度な運動、十分に休息をとり、たばこやお酒を控えめにするなど、生活習慣を整えることが大切です。
私は歯科医師なので歯科的な立場でいいますと、健康寿命と口腔とは密接な関係があります。
自分の歯がたくさん残っていますと全身疾患のリスクが低く、長生きになるというデータがさまざまな国の研究から報告されています。
歯がある人と無い人を比べますと残りの寿命が全然違います。歯を失った人のその後を観察すると、急に身体に色々な症状が出たり、生活習慣病の発症率が高くなったりしているのです。
また、よくかむということは認知機能とも関係があるといわれています。
日本人全体の死因に占める肺炎の割合は約10%ですが、そのうち96%までが65歳以上の高齢者です。高齢になると飲み込む機能が低下するため誤嚥性肺炎が原因で亡くなる人が多いからです。そうしたなか口のなかをきれいにする口腔ケアをおこなうと、肺炎の予防になるといわれています。
歯の健康とともに口腔の機能を維持するとおいしく食べられ、健康寿命を延ばすことにつながると思います。
おまけ① 歯は、特に治療を必要とする場合でなくても、定期的な専門的なクリーニングを受けていますと非常によい状態を保てます。
おまけ② お金に差があるって本当
おまけ③ 平成23年歯科疾患実態調査
8020達成者38.3%
80歳は平均13.9本
6年前と比較して残存歯数が増加したのは国民に8020運動やプロフェッショナルケアの浸透、口腔内に対する意識の高まりなどが要因と考えられます。
残存歯数の増加に伴い、4ミリ以上の歯周ポケットを有する者の割合が増加傾向にあり、若年者だけでなく高齢者への歯周病対策が課題となりそうです。
おまけ④
今回のグラフなどの資料は、厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」保険医協会、歯科医師会、日歯広報より引用しました。